以前「はじめての運動指導・集団指導」をテーマに対談形式の取材を受けました。その時の記事を以下に掲載します。私の指導や人となりが少しでも分かって頂けたら幸いです。
>>HP担当
過日打合せの際、山田和彦トレーナー(以下山田トレーナー)が運動指導についてとても興味深い話をされました。まだ経験の浅い運動指導者の方々には参考になるかもしれません。内容については、山田トレーナーに整理・加筆していただいたものを掲載いたします。
【自分の得意分野を武器に】
>>山田トレーナー
つい先日、派遣指導先の施設に普段個別指導をしているトレーナーが集団指導を行うための運動指導の実習来たんです。いろいろ覚えようととても熱心なんですよね。
>>HP担当
施設での実習にそれなりの意気込みで臨んでいるんですね。
>>山田トレーナー
確か,そのトレーナーは、その月の末までにプログラムを考えて指導できるように準備しなければいけない状況だったと思うんですが、兎に角、メモを取りながら一生懸命なんです。熱心なんです。
もちろん熱意は大切です。
ただ目の前の指導や技術を覚えることに忙殺されるあまり、何か忘れていること…あるんじゃないかって感じたんです。
目の前の指導や技術は所詮人がやるものでしょ。それを身に付けるには時間がかかります。
でも、今まで自分が経験したことは身についてますよね。その経験を生かすことが大事なんじゃないでしょうか。
知識は直ぐに身につくものでしょうが、指導や技術は身につくまでには時間のかかるものだと思うし、また、当然のことですが日々それが変わることもありだと思うんです。
経験豊富な指導者ならある程度その技術や指導を自分のなかで消化し、活用することも可能でしょう。しかしそうなるまでにはどうしても時間がかかります。
だから、とりあえず見よう見まねの指導になってしまい、少しきつい言い方をすれば無責任な指導を何となく続けてしまう結果になってしますわけです。
見よう見まねの指導や技術はほとんど役に立たないものと思ったほうがいいと思うんです。
それを駆使して指導をやっても、直ぐに自信喪失!しちゃうでしょうね。
>>HP担当
それでは、初心者が指導をする際のポイントは何でしょうか。
>>山田トレーナー
まずは自分が自信持って指導できる内容からやってみることでしょう。
仮に1時間の指導時間をもらった場合に、準備運動→主運動→整理運動などの流れに沿って運動プログラムを考えると思います。
僕の経験では、1時間という時間がとても長く感じて最初は「指導」よりも、兎に角時間を埋めることが大変でした。その為には、多くの種類の動きでプログラムを作成し、その動きを覚えて指導するわけで、余裕なんてまったくありませんでした。
でも、考えてみたら何かを目的に集まった方へ指導するわけなので、目的が達成されればよしとする考え方。すなわち「結果」がでればいいことなんですよね。
その為には自分が自信もって指導できる内容が重要だということなんです。多くの種類の動き、数じゃないんです。自分で考え責任を持つことが大切なんです。
極論を言えば、1時間の指導で1つだけの動きだけでもいいと思うんです。
但し、与えられた時間を使って、「何でこの動きがいいのか」「この動きをすることで身体はどのように変化するのか」など、自分の思いや考えを伝えることです。
伝えること、話すことがとても大切です。話すことで普段気付かないことに気付いたりすることが結構ありますよね。
僕なんか今でも指導中に話しながら、新しいことに気付くことがありますよ。
そのときに、指導法に変化を持たせて反応を見るんです。もちろん動きのベースは変えずにその時々で言い回しが変わったり動きの視点を変えてみたり‥自分なりに工夫するわけです。その工夫が次の動き新しい動きにつながるわけです。(ちなみに現在行っている姿勢改善体操は当初、2種類の動きがメインでやってましたが現在は20種類近くの内容になってます。)
こう考えると、これでプログラム完成!はありえないんだと思います.
【偉大なマンネリズム】
>>山田トレーナー
あと、決めた内容は必ずやることが大切だと思います.
参加者と話しが弾んで時間内に決めた内容が終わらなかった場合は、時間が延長しても最後までやることです。
だって、自分で自信もって作った内容なんだからそう簡単に変えたらいけないんです。
コミュニケーションを重視して話しをしたいのなら、予めその時間を指導時間としてプログラムすることでしょ。
また、同じ内容は「あきる」と聞きますが、本当にそうなんでしょうか?
テレビの時代劇は同じ筋書きで毎回進んでいますが人気があるのは何故なんでしょう?
僕が思うにストーリーが分かっていてパッピーエンドだからでしょね。
特に高齢者を指導する際にはこの考えってすごく重要だと思っているんです。
だって、この運動の次にはこの動き‥そしてこの動き‥
次の動きが分かるととても安心できるでしょ。長く休んでいた方が復帰しても、基本的な動きは何ら変わってなければ安心してまた続けることができますよね。
これって継続につなげる重要なことだと思いますよ。
また、同じことを5年10年と続けたらどうなります。参加者は10年前と同じ内容を未だにできるわけで、10年前の自分と変わりない自分がいるんだよ‥って気付いてもらうとかなりモチベーションが上がりますよね。
だから同じ内容は「あきる」から内容に変化をもたせるのではなくて、あきさせないような工夫に力を注いだ方がずっとポジティブな考え方だと思いますよ。
集団指導の指導者って、映画制作に例えると、脚本、演出、監督をやることなのかなって考えることがあるんです。
もちろん参加者は演技者、俳優さん。
専門的なことは分からないけれど、映画づくりって、いい脚本(運動プログラム)を書いて,演出(プログラムの言い回しや視点)で味付けをして、俳優さん達に気持ちよく演じてもらうために、監督が常に気を配ることが大切なのかなって‥皆がひとつになって映画づくりすること‥
だけど、映画づくりの現場と運動の現場で違うのは、運動の現場ではすべて自分ひとりでやることです・。(映画でもひとりでやることもあるようですが‥)
トレーナーにとって大変なことなんでしょうが、参加者も大変でしょうね。
だって映画だったら脚本家や演出家に文句をいってガス抜きできるでしょうが、運動の現場では参加者もガス抜きできないでストレス溜まりますよね。どこかで不満や疑問が言える場が必要なんです。
だから,僕はよく参加者に「結果が出なかったら僕に文句いって下さい!」、「文句が出なければいつまでもいいと思って続けるからね!」って言うんです。
そうすると,さすがに文句は言いにくいのか、なかなか出ませんが、「テレビでこんなことやってました」とか「こんな体操をヨガの先生に教わった」とか「ここを刺激するとこの動きが良くなるって太極拳で体験した」など、自分の考えや疑問を伝えてくれるんです。いろんな話題が参加者から出てますよ。
こうなれば、しめたもの!
このことをテーマに今日の特別講義が始まるわけです。限られた時間内で‥
ぶっつけ本番です。自分のあるだけの知識を駆使して解釈し普段やっている指導につなげるわけです。
滑ったかな?って思うことのほうが多いのですが、何であんなに上手くできたのかと思う日もあるんですよ。(笑)
失敗すれば、多くの面前で恥をかくことになります。その時に、どう対処するかとても重要です。間違えると指導に対する信頼を失います。そしてその噂が参加者に広がります。その結果参加者が減ります。取り返すためには、時間と労力、そして精神的ストレスがかかります。
そうならないようにするためには、予め集団指導は個別指導とはまったくの別ものだと考えて取り組んだほうがいいと思うんです。
最初にそう考えておかないといつか失敗するんじゃないかって。
僕は毎回、参加者に気持ちよく演じてもらう(運動してもらう)ことを心がけています。
俳優さんはその日の体調などで気分がのらないこともありますよね。そんな時は少し演出に変化をもたせたり、テンションが少しでも上がるような話題を振ってみたり‥兎に角、毎回「いい映画づくり」を心がけて監督業を行っています。(笑)
>>HP担当
以前、ベテランの機能訓練指導員と介護施設長にこんな話を聞きました。
3カ月、半年と同じ体操、同じ指導を繰り返していると、「あきた」という声があがるといいます。大抵、運動指導をするスタッフからでるようです。
しかし山田トレーナーは、テレビの時代劇をひきあいに出して、
「ワンパターン(水戸黄門のように最後に印籠を出して悪を退治する)が安心して継続できる運動」であり、安易に運動内容を変更するのは問題があると指摘されました。
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