ヒトには右利き左利きがありその割合は世界的にも圧倒的に右利きが多いようです(90%程度)。それを決める因子のうち、最も有力なのは、右脳、左脳、どちらが体の動きをコントロールしているかによるという「優位脳」説です。右脳は直感やひらめきを司る「感覚脳」と呼ばれ、左脳は記憶や言語認識をつかさどる「論理脳」と呼ばれてます。右脳から出た命令は延髄で交差し、左半身の筋肉に運動を起こさせ、逆に左脳から出た命令は右半身の筋肉に直結するので、「右脳が優位な人は左利き、左脳が優位な人は右利きになる」とされています。その他、遺伝によるものや環境によるものなどが考えられますが未だに解明されてません。
「右左」といえば右側通行、左側通行など交通に関わるものがあります。車や歩行などの右側通行左側通行は国によって異なります。日本では「左側交通は刀を差して歩いていた時代の習慣の名残」、欧米では「銃を持つ社会では右側交通」という説があります。しかし、実際はいずれもそれほどきちんと区分されていたわけではなく江戸時代の日本橋の賑わいを描いた絵画では人はゴチャゴチャと右左なく歩いていたり、19世紀後半のアメリカ西部の写真では、馬車が必ずしも右側を通っているとは言えないようです。 ちなみに飛行機や船は原則右側通行で飛行機の機長席は左。船の船長席は中央右よりにあるそうです。電車は左側通行で運転席は左にあります。飛行機、船(帆や舵)、電車(機関車)ともにそれぞれの事情があるようですね。
さて、ヒトが何か動作を行う場合は「右左」はどうでしょうか。
陸上競技やスケートのトラックはどの国で開催されても反時計回りで競技を行います。しかし、競馬は時計回りと反時計回りの両方があります。ヒトが、馬や自転車に乗る時など基本的に左側から乗ります。ハンマー投げや円盤投げも反時計回りでターンします。なぜそうなのでしょうか?ヒトの運動の大半は「左足が軸(左軸)」になっているからです。私見ですが、ヒトの歩行を観察すると右足から歩き出し、反時計回りで振り返って戻る方がほとんどです。これらが左足が軸になっているということです。
何故ヒトは「左軸(支持)」なのか。『足の裏は語る』の著者で足の裏博士と呼ばれた平沢弥一郎氏。氏はその著書の中で,「機能的一側優位性の存在」として左足が主軸、右足が運動性と述べています。その根拠は、①右足に比べて左足が大きいこと、②直線上に左右どちらかの足をついて歩いた場合左足で直線上を歩くほうが歩き易いヒトが多いなどを挙げています。
ヒトの足にこのような違いがあるから、例えば自動車はハンドルに左右はあっても、右足でアクセルとブレーキを使い分け、左足はクラッチを踏むのは万国共通です。
日本の文化では右手を大切にする傾向があります。例えば、昔は箸や刀は右手で持つよう教育されていました。その背景には「脳」と左右の関連として考えられる、左手は「本能」、右手は「理性」ということが自然に考えられていたのでしょうか?
スポーツ分野での「左軸」がパフォーマンスに与える影響について。ボクシングでは「サウスポースタイル」で利き腕が右というのが有利だと言われてます。プロ野球 和田毅投手は自身の投球フォームについて、「左半身だけで投げる」「左脚に乗せる」「脚と胴体を離す」というイメージを語っていました。シンクロやバスケットボールのトップ選手は、「左脚重心」によっていいパフォーマンスができると述べてました。
スポーツ選手がもっている「左軸」というイメージは「左股関節」に何か秘訣があるのではないか?
スポーツではよく「腰を廻す」と言われます。これは、いわゆる「腰」を廻すのではなく基本は「股関節」を指してる考えます。「左重心で運動能力が劇的に変わる」の本の中で、左投手と右投手の投球フォームの違い(右投手は投球後身体が一塁方向に流れる(松坂投手など)),左打者のイチロー選手は踏み込んだ右足は単なる「支点」で、スイングは左でコンパクトに廻して打っている。一方、右打者も基本は「左重心」として考えると、個性的な構えに見える選手も理にかなっていると述べています。
そういえば、以前国立西洋美術館「英博物館 古代ギリシャ展 THE BODY 究極の身体,完全なる美.」で展示されていた円盤投げ(ディスコボロス:後2世紀(原作:前450-前440年頃))も、きれいに身体をしなられながら「左重心」をとっているようでした。
いいフォームや効率いい動きは「美しい」ということなのでしょうね。
※以上2008年1月機関誌に掲載した記事より
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